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トレーニングを90分で収めるスペインと日本の違い!


Jリ常任理事を務める佐伯夕利子氏は、03年にスペイン男子リーグ3部で女性初の監督に就任し、その後アトレティコ・マドリード女子チームやビジャレアルCFなどの組織でスペインサッカーの指導を行ってきた。そんな佐伯氏は、日本のスポーツ指導の現状をどう考えているのだろうか。


日本のスポーツ指導の問題は、「練習時間が減ると、競技力が衰退するのではないか」という懸念の声です。  かくいう私も18歳でスペインに渡るまでは、サッカー、ソフトボール、ゴルフなどを、地元の少年団や部活動を通じて経験しました。日本のスタイルと、欧州のそれを私なりに比較することはできます。  では、28年間に及びスペインで指導者としてやってきた今、どう考えているか。  フットボールに関しては、練習すればするほどうまくなるような単純な競技ではないと思っています。

日本の子どもたちは本当に練習のしすぎなのか  スペインのフットボールは育成年代において優れた育成システムをもつといわれ、世界からも高い評価を得ています。ビジャレアルにも、膨大な数の指導者が世界中からひっきりなしに研修にやってきます。 「ビジャレアルでは、選手育成のために何か特別なことをやっているのか?」  そう尋ねられると、返答に困ってしまいます。秘伝の育成レシピがあるわけでなく、ただ「常識ある範囲で」「選手を最優先に」「(脳科学や心理学を含めた)科学的な根拠をもとに」指導を探索してきました。  これら3つを念頭に、ただただ日々精進あるのみ。他に特別なことはしていません。  では、スペインの子どもたちは日本の選手よりもより多く練習をしているのだろうか? もしくは、日本の子どもたちは本当に練習のしすぎなのか?   この疑問に対する解答は私にもわかりません。そこで、ビジャレアルの育成選手を取り巻く環境を数値化してみました。各年代のトップチームで過ごした例です。どの子どもも、スペイン各地でスカウトされたフットボールのエリート少年。青少年期をほぼフットボール漬けで過ごすため、スペイン国内でもフットボールに注ぐ時間が圧倒的に多いケースになります。


で活動は週に3日、夏休みのオフは2カ月  そんな彼らが、小学1年生から高校3年生までの12年間で練習と試合に費やす活動時間の合計を算出すると、3124時間でした。年代によりますが、小学生で活動は週に3日。夏休みのオフは2カ月あります。  スペインにも大学受験はあり、子どもたちはそれなりに学業でのストレスを抱えています。しかし、彼らに「試験期間中は練習を休んでもいいよ」とでも言おうものなら、私たちが怒られてしまいます。 「僕らの唯一の気分転換であるフットボールまで奪わないでくれ!」と言われるに決まっています。嫌々やっている子どもはいません。フットボールが楽しくてたまらないのです。


プロにはあるのに育成年代にはない「オフ」  選手ひとりあたりのコーチの絶対数が定められ、毎週末は必ず試合に出場できるシステムが用意されています。小学生の1回の練習時間は75分。ダラダラと何時間もトレーニングさせることはなく、冬と夏はしっかり完全休養を与える文化があります。プロであるトップチームの選手にオフがあるのに、育成年代だけオフがない日本のほうが不思議に見えてしまいます。  組織として一貫した育成過程を提供し、適度な練習量、良質な練習内容、すべての子どもに継続的に試合の出場機会を与える競技システムの構築。なおかつ、意味ある学びを習得できる。こうした環境づくりこそがスポーツの競技力を左右する。つまるところ、練習を何時間行うかではなく、「学習効果を高めるためのスポーツ環境づくり」が何よりも重要なファクターだといえます。  この要因を見ずに、練習は裏切らないとばかりに長時間練習を強いてしまう様子は、大人によってスポーツが支配されているように見えてしまいます。指導者自身もこのことに気づかないのかもしれません。


ようは質の高いトレーニングを90分で収めること  支配されると、長時間練習になりがちです。逆に、子どもと対等であれば、時間の長さや心身への負担、試合への平等な出場機会を考えられるはずです。  スペインではビジャレアルのみならず、小学生は75分以上は練習しません。試合時間が小学5、6年生で30分ハーフ。全部で60分なので、それ以上の過度なトレーニングをする意味がないのです。これはスペインフットボール協会が決めたわけでもなく、すべての人々が「小学生は75分で当然」と考えています。スタンダードな認識です。  中学生以上はプロでさえも、90分以上練習することはありません。なぜならば、ゲームが90分だから。要は最も現実に近い状態でトレーニングをすることが、クオリティが高い状態とされています。  そのような理解のもとに立つと、試合時間である90分間で質を求め、より内容の濃い、クオリティの高いトレーニング内容を90分で収めること。それこそが私たちコーチのチャレンジであり、腕の見せどころということになります。

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